篠(しの)から糸を紡ぐ

自然観察実験塾    NPO科学教育研究所    ℡:090 9699 0938  
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参加者数は11組28名。

参加者各組が、栽培して収穫した和綿(わわた)のコットンボールからわた打ちして篠(しの)を作成しました。今日の課題はその篠から糸を紡ぐことです。篠にゴミがなく、ふんわりと仕上がっている状態にした後、スピンドルを使って糸紡ぎに挑戦します。少しづつワタを繰り出しながらスピンドルを回転させることで”縒り”をかけ、少しづつ強度を与え切れにくい糸が出来上がります。機械を使わない手法でワタ糸を紡ぐ体験は初心者にはなかなか難しいかもしれません。篠から細い糸を繰り出すことに集中するとすぐに糸は切れてしまいますし、あまり縒りを掛けると切れてしまわないかと心配になります。そこで、上の写真のように撚っている糸を少し緩めて縒りの戻りができる状態を確認しながら進めるのが確実ですね。

2018-11-17

今日の勉強

ワタは約8000年前には使用されていた。貴重な繊維として利用できるワタをより多く収穫するために、よ色々な工夫がされて来た。そのひとつはワタの実を大きくすることである。和綿と比べ洋綿のコットンボールは格段に大きい。これはどのような改良で実現したのかについて話をした。植物の果実や花などの大きさは遺伝子量(遺伝子セットの倍数化)に影響される。ライ小麦、イチゴ、ナシ、リンゴ、その他多くの植物が倍数性により果実や植物本体の大きさが大きくなることが知られている。これは一種の突然変異だが、人為的に誘発することも可能で、多種多様な品種が生まれている。倍数性による育種のほか、遺伝的変異による植物育種は広範囲で行われている

植物の倍数性のような”染色体異常”は動物でも見られる。当然ヒトでも起こる現象であり、特に高齢になる程この異常頻度は高くなる。ヒトの染色体の倍数性の例も示した。動物の場合は必ずしも倍数性で体が大きくはならない。

今日の体験作業

篠→糸紡ぎ→綛(かせ)→縒(より)どめ


糸紡ぎ:綿の繊維の一本一本はとても細く、弱く、すぐに切れてしまう。この弱い繊維を細いながら束にすることで少しは強度が生まれるが、それでも引っ張られると繊維と繊維がすべるように離れていってしまう。しかし、この細い繊維に”縒(より)”をかけると、その強度が格段に増す。

1本の弓より3本の弓の例えよりも、束になるだけでなく”縒(より)”による強度の増加は非常に有効だ。そのため、細い綿の繊維に縒りをかけて糸にする。この重要な過程の体験を行ったわけで、この体験が十分でなかった方々は、再度挑戦してみていただきたい。縒りのかかり具合は、スピンドルと紡いでいる途中の糸を少し緩めて、縒りの”もどり”で生じる”もつれ”のような糸の飛び出し具合を見ながら縒りの過不足判断をするのが目安になるでしょう。


綛(かせ):紡いだ糸はそのまま放置しておくと、”縒り”を戻そうとする力が働き糸の縒りが戻ってまっすぐな糸として保存ができません。そのため、縒った糸が元に戻らないようにして保存する必要が出てきます。その方法として、紡いだ糸を綛繰機(かせくりき)にかけます。綛繰機の代わりに、適当なサイズの発泡スチロール箱でも紙の箱でも単なるダンボールの紙(厚手の紙)でも使用できます。紡いだままの糸をそのまま縒りをかけるのでもなく戻すのでもないように巻き取ります。巻き取った束は綛(かせ)糸と呼ばれます。その綛糸を片手で持ってぶら下げるとどちらかに回っているように見えると思います。それをそのまま、綛糸の両端を捻れの方向に5−6回捻った後、一方を他方の輪っかに入れ込んだまま保存します。そうすることで、それ以上の縒りの戻りを防ぎます。さらに不均一にかかっている縒りを時間をかけて平均化することにも役立ちます。


縒(より)どめ:綛(かせ)を鍋で煮ます。綛が浸かる程度の重曹水(300mlの水に5g(小さじ一杯)の重曹を溶かしたもの)を沸騰させ、約30分ほど煮ます(弱火で)。粗熱が取れたら、2、3度振り洗いをし、軽く絞ってさばいて竿に干して乾かす。乾いたら、厚紙に巻き取る。この縒り止めの状態で、次の織りの体験に臨みます。

篠の掃除と糸紡ぎの説明を熱心に聞く受講生。糸紡ぎの”縒り”の大事さを理解することが重要なポイント。

綿繰り機を使う。手作業と比べて随分と効率的だ(左)    わた打ち後のゴミ掃除(右)

糸紡ぎの様子

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洋綿

和綿

2018-10-28 (Sun)


糸を紡ぐ  スピンドル(紡ぎ独楽、タクリ)を使って縒りをかける

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